光のもとでⅠ
 コクリと頷き、それに手を伸ばす。と、あたたかいラベンダーティーだった。
 栞さんはめったにラベンダーティーは私に出さない。香りも味も好きだけど、アロマを炊くこともない。
 安眠と共に血圧を下げる効果があるからだ。
 でも、今日は特別なのかな……?
「少しずつ話してみな」
 後ろから、兄とは違う優しい声が降ってきた。
 すると、肩から余計な力が抜けるのがわかった。
「あのね、海斗くんたちに訊いて少しはわかったんです。 付き合うイコール婚約や結婚と思っている人と、そうでない人がいるっていうこと……」
「くっ……」
 あ、ひどい……。
 カップを両手に持ったまま若槻さんを振り返ると、
「スミマセンデシタ」
 と、謝りつつも、目にはわずかに涙を浮かべている。
 本当にひどい……。
 でも、仕方ないのかな。若槻さんは桃華さんや佐野くん側の考え、というのが今のでわかった。
「でもね、海斗くんもそうだったけれど、秋斗さんはそうなのでしょう? 付き合うイコール結婚なのでしょう?」
 下から見上げるように若槻さんを見ると、苦笑しつつ、
「今はそうとしか考えてないね」
 と、答えてくれた。
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