光のもとでⅠ
 ツカサはいつものように本を読んでいて、秋斗さんは携帯をいじっている。ふたりとも、湊先生や昇さんに話しかけられれば受け答えはするし話も続く。静さんが仕事の話を振ると、秋斗さんはお仕事モードで答える。
 いつもと変わらない。大きく変わることがあるとすれば、私がこの会食に加わってから初めて昇さんが参加していること。それと、最初から人が全員揃っていること――。
 ほかは何も変わらない。変わらなすぎて少し怖い。
「彼ら普通にしてるなら、翠葉も普通にしなくちゃ。……郷に入っては郷に従え、よ」
 普通に――何が普通だっただろう。私の接し方は何が、どれが普通だっただろう。
 何も見えなくなりそうだった。自分というものが、何も――。

「翠葉ちゃん」
 声をかけられ、ビクっとする。
 私はキッチンの片隅に座り込んでいた。
 正確には、キッチンとダイニングの間にある、カウンターの中に。
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