光のもとでⅠ
「でね、たぶんここからが男女間でしない話なのだと思う」
「んー……いわゆる性行為ってやつでしょ?」
 ずばりと言い当てられる。
 カップをラグに置き、右手で頬を押さえつつコクリと頷く。
「私は……まだ、結婚とかそういうことは考えられなくて、だから、そういうのわからない……。秋斗さんが結婚まで視野に入れてそういう関係になることを求めているのだとしても、私はそこまでの覚悟がないというか……」
 小さな声でボソボソと話していると、頭にピッ、と何かが押し当てられた。
 なんだろう、と見上げると、若槻さんの右手、たぶん指が頭を突いていた。
 その指が人差し指とわかったのは、次に押されたのが額だったから。
「……何かスイッチでもついてましたか?」
 訊くと、
「リィはそれが素だからすごいよね」
 と、笑う。
 スイッチが付いているかどうかは教えてくれなかったけれど、もっと大切なこと。
 今私が欲している答えをくれた。
「秋斗さんが性行為を求めてくるっていうのは、一種愛情表現であり、あの人の欲望。なので、リィは何もそれを現時点で受け入れなくちゃいけない必要性もなければ、こんなに考え込まなくてもいい。逆にここまで考えて悩んでくれているっていうのは秋斗さんのことをそこまできちんと考えているってことだから、秋斗さんにとっては嬉しいことなんじゃないのかな。ま、そうとはいえ、今までの行いが行いの人だし、自分の欲をどこまで抑えられるかは不明だけど。でも、それにリィが合わせる必要は全然なし。ホントにさ、怖い行為じゃないんだよ。でも、気持ちを殺してまでする行為でもない。だから、リィはリイのままでいい。OK?」
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