光のもとでⅠ
 会食は普通に進む。何事もなく、誰が難しい顔をするわけでもなく、普通に普通に――。
 私にはそれが奇妙に思えてならなかった。
 時には笑いだって起こる。佐野くんと海斗くんが中心となって。
 心から笑っている人もいただろう。でも、そうでない人もいたと思う。
 本物の笑顔と見せかけの笑顔。話す言葉に嘘は含まれない。表面を取り繕うような話もない。
 隣のツカサは笑わずにもくもくとご飯を食べ、話しかけられたときにだけ面倒くさそうに答える。
 秋斗さんは隣に座る海斗くんに、「少し黙ったら?」などと言いながら箸を進める。
 いつもと変わらない光景なのに心がザラザラする。どうしようもなく、心がザラザラする。
 聞こえてくる会話がどこか別の次元で話されているような、くぐもった音に変わった。
 音がポワンと聞こえる。鮮明ではなくなる。
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