光のもとでⅠ
 私はゆっくりと振り返り、
「無理、してないから」
 教材を取りに行くと伝え、私は自室に向って歩き出した。

 誰かの視線が背中に張り付いてる気がしたけど、その確認はしない。……しないのではなく、できないだけ。
 自室に入って息を思い切り吐き出す。
「翠葉」
 二酸化炭素を吐き切る前に声をかけられて心臓が止まるかと思った。
 胸を押さえて振り返ると、
「何よ……」
 湊先生が眉根を寄せて立っていた。
「い、いえ……」
 先生は部屋のドアを閉めると、
「補講、どうだった?」
 話の内容に私はほっとする。
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