光のもとでⅠ
 言われてみたら、顔が少し細くなったように思えた。
「じゃ、今日は夕飯お世話になっちゃおうかな……」
「えぇ、せっかくお隣なんですから」
 そんな会話をしてゲストルームを出た。

「さっき口止めしなかったけど碧さんに話しちゃったかな?」
「いえ、内容までは……。ただ、楓先生の知り合いが入院していてハープを聞かせてほしい、ってお願いされたことだけ……」
「ありがとう。まだ伏せておきたい内容なんだ」
「はい」
 お礼を言われるのはちょっと違う。
「流産」という言葉を口にできなかっただけ。
 性教育の授業を受けてから、「命」というものに対して過敏になっていたのだと思う。
「彼女ね、まだ大学生なんだ。で、来年にはウィステリアホテルの託児所に就職が決まってる。だから、余計に今回の事態に動揺しててね」
 その言葉に、玉紀先生の授業を思い出す。
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