光のもとでⅠ

13

 相馬先生は脈診をしてから鍼を打つ。いつもと変わらない。
 病院だけがいつもと何も変わらないのかもしれない。
 最近の自分は、自分が誰なのかわからなくなりそうなことがある。
 クラスメイトと話していても、ツカサや秋斗さんと話していても、家族と話していても――自分がどこにいるのかふとわからなくなる。
 でも、誰にも何も言われない。
 だから、たぶんうまくやれているのだと思う。
 これが、一般的に言う「普通」なんだ、と思うことにした。
 心が麻痺したような、そんな感覚。
 痛くもつらくもない。その代わり、楽しくも嬉しくもない。よくわからない。平坦――。
 高校に入ってからずっと、ジェットコースターに乗っているような状態だったからかな。
 今歩いている道がひどく平坦で、まるで病院の廊下のように思えた。
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