光のもとでⅠ
段差がない、坂という坂もない。すり足で歩いても転ぶこともない。
それが患者にかかる負担を減らすと同時に、筋肉を奪うものだということを私は完全に忘れていた。
テスト前からテスト期間の十日弱でそんな状況に慣れてしまった。
勉強さえしていればよくて、テストさえクリアできればよくて。
人の激情に触れることはなかった。もしかしたらあったのかもしれないけれど、私には伝わってこなかった。感じ取ることはできなかった。
この日、楓先生の彼女さんに会うまでは――。
「飯、食えてんのか?」
「はい、食べてます」
「どのくらい?」
「半人前弱くらい」
「そうか。ストレスマックス、胃腸にだいぶ負担かかってるが……薬は?」
「薬は適度に……。痛みが出れば追加飲みもします。でも、ODはしていません」
それが患者にかかる負担を減らすと同時に、筋肉を奪うものだということを私は完全に忘れていた。
テスト前からテスト期間の十日弱でそんな状況に慣れてしまった。
勉強さえしていればよくて、テストさえクリアできればよくて。
人の激情に触れることはなかった。もしかしたらあったのかもしれないけれど、私には伝わってこなかった。感じ取ることはできなかった。
この日、楓先生の彼女さんに会うまでは――。
「飯、食えてんのか?」
「はい、食べてます」
「どのくらい?」
「半人前弱くらい」
「そうか。ストレスマックス、胃腸にだいぶ負担かかってるが……薬は?」
「薬は適度に……。痛みが出れば追加飲みもします。でも、ODはしていません」