光のもとでⅠ
 ノックをしてからドアを開ける。と、絶妙なタイミングで物が飛んできた。
 壁に当たる手前、ふかふか絨毯に落下したのはプラスチック製のコップ。
 びっくりしている私をよそに、楓先生はほかに物が飛んでこないことを確認してから病室へ足を踏み入れる。
 私はカップを拾い、そのあとに続いた。
「物は投げない。俺じゃなかったらどうするつもり?」
「楓さんだったんだから問題ないでしょっ!?」
「でも、お客さんを連れてくるって言っておいたでしょ?」
「連れてこないでって言ったでしょっ!?」
 彼女さんは、「絶対安静」で入院しているはずなのだけど、とてもそんなふうには見えない。
 ものすごい声量で言い返していた。
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