光のもとでⅠ
 大声や人の怒鳴り声は苦手。この会話を聞いただけで身が竦む。
 私、来ないほうが良かったんじゃないかな……?
 楓先生に視線をやると、
「びっくりさせてごめんね」
 言いながらも、彼女さんの自己紹介を始める。
「こちら、東果歩(あずまかほ)さん。東西南北の東に果物が歩むって書いて、東果歩」
 それだけ言うと、くるりと身体の向きを変える。
「果歩。こちら、御園生翠葉ちゃん。御苑の御に花園の園に生まれる。それで御園生。翠葉は翡翠の翠に葉っぱの葉。綺麗な名前だよね? そのハープの持ち主さんだよ」
 楓先生はソファの横に置いてある緑色のハープケースを指差して紹介を終えた。
 え……? 先生、名前の紹介だけですか?
 唖然としていると、
「あら綺麗。私の捻りのない名前とは大違いね」
「果ー歩っ、誰もそんなこと言ってないだろ?」
「楓さんの説明がそう聞こえたって言ってるのっ」
 すぐに言い合いが始まってしまう。
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