光のもとでⅠ
 ぱっと見、勉強していたように思える。
 彼女さんは私を見るのではなく、それらをチラチラと気にしているようだった。それに対して楓先生は、
「リンゴジュースがあったな」
 なんて、私をもてなす準備を始める。
「楓先生、いいです……」
「そうよ。長居されるの迷惑だし」
 きつい一言が飛んできた。
「果歩っ」
「だから頼んでないって言ってるでしょっ!?」
 言い合いが始まるとハラハラする。
 でも、単なる言い合いであることにはすぐに気づいた。
 顔を合わせれば口喧嘩、とはこのことなのだろう。
 ものすごく重要なことでケンカしているのではなく、何か気に食わないことがあって、それで人に当たっている。そんなふうに見えた。
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