光のもとでⅠ
 それを楓先生が頭から抑えるように、「果歩っ」と言うのがイライラに拍車をかけているのかもしれない。
 抑えられると反発したくなる。そのいい例がこの場にあった。
 玉紀先生――これ、どうしたらいいと思いますか?
 ものすごく、ホットライン的な電話をしたい心境に駆られた。

 とりあえず……このケンカは意味を成さない。それだけはわかる。
 なら、これを止めるのにはどうしたらいいか――簡単なのは引き離すこと。
「先生、私、相馬先生のところに忘れ物してしまったみたいで……」
「え? じゃぁ、取ってくるよ?」
 まるで、「行かないで」という目で見られた。
 楓先生、大丈夫。ここから出ていきたいのは山々だけど、先に出るのは楓先生だから。
 ここのセキュリティには私の登録がされていない。したがって、私がひとりで九階へ下りることはできても上がってくるのには楓先生が一緒でないと無理。
< 8,515 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop