光のもとでⅠ
 投げられるものがあれば投げたい、そんな心境なのかもしれない。
 もともと行動を制限されたことのない人がベッドから動けない、というのはかなりのストレスだろう。もともと行動を制限されている私ですら感じるストレスなのだから、自分が感じる以上のストレスと推測する。
 楓先生……わかってるはずなのに、わかってるはずなのに、どうして――。

 私はゆっくりベッドに近寄り、さきほどサイドテーブルに置いたリンゴジュースを差し出した。
「とりあえず……糖分摂りましょうか? 少しは落ち着くかも……」
「……ありがと」
 果歩さんはゴクゴクとそれらを飲み干した。まるでお酒でも飲むような飲みっぷりで。
「……食べ物もさ、食べたいのに食べると気持ち悪くなる。匂い嗅いだ時点でアウト。もー、どーにもなんなくてねっ」
 そのあと、「ごめん」と勢いよく謝られた。
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