光のもとでⅠ
「楓さんにしか八つ当たりできないの。でも、間違いなく……すい、すい……」
「翠葉です」
「あ、そうだった。翠葉ちゃんにも当たっちゃったよね。ホント、ごめん」
「いえ……。楓先生が私をここに連れてきたのは東さんと話すためだと思います」
「あ、東さんはやめて? なんか気持ち悪い。カホでいいから。 で? 何? 話すため? 楓さんは悠長にハープがどうのって言ってたけど?」
「それはきっと口実です」
 果歩さんはきょとんとした顔をした。
 視線や口調の鋭さはなくなっていた。
「私、走ったりすることを止められているんです。日常的な行動に制限があって……夏休み中はずっと入院していました。なので――動けない人のストレスには理解が深いほう、というか、経験者だから共感できる、というか……」
 もう、言っていてなんだか悲しくなってくる。少しだけ、楓先生ひどい、と思った。
 だけど、私が思ったのと同時に果歩さんが口にする。
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