光のもとでⅠ

「翠葉ちゃん」
　肩を軽く叩かれ、
「とりあえず座ろうか？」
　ベッドサイドに置いてあった椅子に腰掛けるよう、楓先生に促された。
　椅子はスツールではなく、家具屋さんやアンティークショップでそれなりの値段で売られているような椅子。
　座るところと背もたれ部分は布張りでクッション性があり、それらは硬い素材の木枠にはめ込まれている。両サイドには肘置きもあった。特別室に相応しい椅子。
「翠葉ちゃん、私の目ぇ見て？」
「え……？」
　果歩さんの顔、目を見ると、にこりと笑った。眩しすぎる笑顔で。
　笑顔は穏やかな表情へと変わる。
「お父さんが亡くなったことは悲しい。それに時々思い出しては寂しいと思うこともある。でもね、私の心の中では片付いてることなの。心の中に引き出しがあって、大切にそこにしまってある。必要なとき、どうしても会いたくなったときにその引き出しを開けるの。アルバムを開くみたいにね。それで大丈夫なんだ。お父さんのことを一緒に思い出してくれる人もいるから」
　そう言ってもう一度笑った。