光のもとでⅠ

16

 今日になって気づいた。
 初めてここに来たときは楓先生の奇妙な前置きがあり、さらにはドア開けたら物が飛んできた。そんなこんなで部屋に入ることをとても躊躇したけれど、二回目以降はそんなこともなかったな、と。
 二回目に緊張したのはひとりだったから。
 でも、三回目の今日はこのドアを前に緊張することはなかった。
 たとえ、今日は輪をかけて機嫌が悪い、と事前情報を与えられていても、緊張を強いられることはない。それは、果歩さんの怒りが私に向くことはないから。怒りの矛先はいつだって楓先生に向いている。
 私は、今日は何があったのかな? 楓先生は今日は何を言っちゃったんだろう? 
 そんなことを思いながらドアの前に立っていた。
 軽くドアをノックし中へ入る。と、
「翠葉ちゃん、聞いてよっっっ」
 今にもベッドを下りそうな勢いで声をかけられた。
 そんな言葉に緊張することはないけれど、果歩さんのこの声量には驚く。そして焦る。
 挨拶もせずに、両手を前に伸ばした。
 即ち、ストップっ!
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