光のもとでⅠ
 納得したような果歩さんだったけど、
「でもっ! 楓さん、女の子の靴は勝手に脱がさないっ。慣れたふうに持ち上げないっ。エロイっ。翠葉ちゃん面食らってるでしょっ!?」
 確かに私は面食らっていたけれど、私が一番面食らったのは果歩さんの一言だった。
 楓先生をいやらしいと思ったことはない。それは今も。
「翠葉ちゃん、俺、エロイ?」
 真面目に訊かれて、真面目に首を振る。否定の意味をこめて。
 楓先生は私から視線を外し、果歩さんの方を見やる。
「……だって。果歩の見方や思考回路のほうがエロイんじゃないの?」
 なんともストレートな言葉を爽やかな笑顔で返した。
「失礼ねっ」
「先に失礼なこと言ったのは果歩でしょ?」
「ちょっ、翠葉ちゃんっ!? 遠慮しなくていいんだからねっ?」
 言われて困る。だって、本当に思わなかったから。
 でも、少し考えてみた。今みたいなことを秋斗さんやツカサにされたら、と。
 一気に、火がついたように顔が熱を持った。
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