光のもとでⅠ
 ――そんなわけで、初めて来た日にはベッドからいくらか離れた場所に置かれていたソファだけれど、今はベッドの脇に寄せられている。ちゃんと腰掛ける方がベッドを向いて。
 火曜日の翌日、水曜日に来たときにはすでにこの配置だった。
 楓先生と果歩さん、どちらの配慮かはわからないけれど、間違いなく私に対する気遣い。
 だから、私はその優しさを甘んじて受ける。
 思い切り病人扱いをされているわけではない。でも、何も気遣われてないわけでもない。
 どうしてかはよくわからない。でも、何もかもがバランスよく感じられて、居心地が悪いとは思わなかった。
 それは空間だけではなく、この病室の主にも感じていたこと。
 果歩さんが思ったことをポンポンと口にするのは、聞いていてなんだか気分がスッとした。最初こそ、楓先生に向ける言葉のひとつひとつにハラハラしていたけれど――本音だけど本音じゃない。そういうのが段々わかってきたから。
「好き」のカタチは人それぞれなのかもしれない。
 曲の表現に個人差があるように、「好き」の表現にも個人差があるのだろう。
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