光のもとでⅠ
 ソファに座り提案する。
「果歩さん、これ……破っちゃいましょうか?」
 私が「これ」と言ったのは、ベッドの脇に積み上げられた雑誌。
 果歩さんの妊娠が発覚したのは十二月に入ってからとのこと。けれど、積まれている雑誌はバックナンバーからずらっと揃えられている。ご丁寧にも、一社に留まらず数社分。
 明らかに手をつけられていないであろうそれらを指差した。
 果歩さんが取り揃えたとは思えないし、考えられる人はただひとり――楓先生。
 果歩さんはポカンと口をあけて私を見た。
「物を投げるのは身体のどこかに必ず力が入るでしょう? でも、紙をちぎるのって手先にしか力を使わないので……」
 説明をしてみると、果歩さんはケタケタと笑いだした。
「翠葉ちゃん、それ実践したことあるの?」
「……アリマスヨ」
 けれど、私は破るに留まらなかった。
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