光のもとでⅠ
「翠葉ちゃんもご乱心?」
「いえ、そういうわけではないのですが……。久しぶりにその音を聞いたら、ちょっとそそられるものが……」
 そんなふうに答えたら笑われた。
「いーよいーよ! じゃんじゃん破こうっ!」

 ふたり揃って黙々と紙を破いていた。傍から見たらかなり異様な光景だったと思う。誰にも見られていないことだけが幸い。
 ふたりは紙を破いているわけだけど、破き方は大きく異なる。
 果歩さんが数枚一気にビリッ――バリバリ、と破くのに対し、私は薄っぺらいページをペリペリと破く。自分にしか聞こえないくらいの音を立てて、ペリペリと。ちりちりじりじり、と指先に破く衝撃が感じられ、それと共に音が鳴る。
 塗りつぶすだけでは物足りなくて、物を壊すということを実感したくて取った行動だった。痛みに極力障らない方法で、なおかつ実感できる方法がこれしか思い浮かばなかったのだ。なんとも稚拙な……。
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