光のもとでⅠ
 あのときの自分を振り返りつつ、今目の前にいる果歩さんを見る。
 楓先生は、果歩さんが赤ちゃんを産むかどうするか悩んでいると言っていたけど、果歩さんの中で答えは出ているのだ。「産む」と。
 だからベッドの上で絶対安静、という言いつけを守っているし、ストレスをいっぱい抱えていてもこの部屋から出て行こうとはしない。産科の先生の許可が出ないから退院できない、という現況を呑んでいる。
 それなら、どうしてこんなにも不機嫌なのかな……。
「果歩さん……どうして果歩さんは不機嫌なんですか?」
 疑問を口にすると、
「ザックリストレートにきたねぇ」
 ……やっぱり、どこか唯兄と似た返しがくる。
 ふたりとも手元の作業は止めずに話す。会話の間にベリ、ビリ、バリ、など様々な音を織り交ぜて。
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