光のもとでⅠ
「そりゃ、いろんなことに不満や不安があるからだよ」
「でも、もう産むと決めているのでしょう?」
 果歩さんはびっくりした顔を見せ、豪快に破いていた手の動作も止まる。
「私、まだ何も言ってないよ?」
 まじまじと見られたので、私もまじまじと見返す。私は手作業は止めず、相変わらずペリペリ、と小さな音を立てて話を続けた。
「言ってないけど……でも、この部屋にいるから。いつもベッドの上にいるから」
「っ……」
「それはつまり、お腹の子が大切だから、ですよね? 守るためにここにいるんですよね?」
「……でも、それは、今は――かもしれないよ?」
「あの……私、動物を飼ったこともないからわからないんですけど」
 何となく視線が宙を彷徨いそうになって、自分の手元に落とした。
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