光のもとでⅠ
 ペリペリペリリ――。
「一度守ろうと思った命を、途中で捨てられるもの、ですか?」
 自分が発した言葉で部屋の酸素濃度が一気に薄まった気がした。
 果歩さんが息を止めこちらを見ているのがわかる。視線と酸素に、私も息苦しさを覚えた。さすがに手も止まる。
 私は急に焦り始める。焦ったら、紙を持っていた手に力が入ってクシャリ、と違う音が鳴った。
 違う音が紛れ込んだことに、さらに動揺する。
「すみませんっ……あの、ごめんなさい。産むか産まないかは果歩さんの人生に大きく関わることで、あの、私が何を言える立場でもないのに――自分勝手な考え、というか、余計なことを言ってしまって、本当にごめんなさい」
 ソファに座ったまま土下座の体勢。質量の軽いビニール袋がカサっと小さな音を立てて絨毯に落ちた。
 ビニール袋から零れた紙吹雪を見ながら思う。
 これは第三者が口にしてはいけない言葉だったのではないか、と。一秒ごとに拍車がかかる。罪悪感が増していく。
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