光のもとでⅠ

17

 人と距離を置くのは一処世術で――使い方を誤るとただの壁になり、ただのひどい人になる。
 桃華さんたちが何も訊いてこないのは私が話さないから。私が何もない素振りを装っているから。
 携帯事件からこちら、何も話さずにきた。ひとつ隠しごとができると、そのあとどうしたらいいのかわからなくなる。
 あの日、私は佐野くんを巻き込んだくせに、佐野くんにすら事情を話せなかった。久先輩は全容を知っていたけど、「受験生だから」という大義名分を当てはめることができて――だから、誰ともその話をせずにきた。
 何事もなかったかのように振舞う秋斗さんやツカサ、湊先生たちを見て、気持ち悪いと思うほどの違和感を覚えたのに、それが普通ならそれで――と、私は……とても私らしくないことをした。むしろ、その場に流されることは私らしいことだったのだろうか。
 そんな私を誰も何も言わないから、これが普通なんだ、と思った。でも、本当は違った。みんなの優しさだっただけなのに……。それに甘えて、気づけばあと数日で冬休み――。
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