光のもとでⅠ
 着替えを持って洗面所へ行くと、唯兄が手洗いうがいを終わらせたところだった。
「唯兄」
「ん?」
 いつもと変わらない笑顔を向けられる。すでに「いつもどおり」という仮面の装着が済んでいる感じ。
「お風呂から上がったら髪の毛乾かしてくれる?」
「珍しいね? いつも俺から言うのに」
「うん。なんとなく……甘えたい日、かも?」
 うかがうように唯兄の顔を見上げると、
「ドライヤー構えて待ってましょう?」
 やっぱりいつもどおりの笑顔が返された。
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