光のもとでⅠ
 校内であの日の女子生徒と鉢合わせることはない。でも、処分という処分が下らなかったということは、今もこの学校のどこかにいるわけで――。
 私はあの人の名前も学年も知らない。訊けば教えてもらえたかもしれない。そうしなかったのは、自分の持つ負の感情を抑えられそうにはなかったから。
 携帯を池に落とされた代わりに、私は彼女の頬を叩いた。それで喧嘩両成敗ならぬ、両者ともに処分下らず、となったわけだけど、私は未だ怒りの感情を持て余している。
 ほかの人はこういう感情をどうやってやり過ごすのかな。どうやって落ち着けるのかな。
 いくら考えても答えは出ない。訊いてみればいいのに訊くこともできない。
 先日、果歩さんの病室で雑誌を破る作業に加わらせてもらったのは、この鬱憤を晴らしたいという理由もあった。でも、紙を破る程度では晴れなかったみたい。
 果歩さんの、ものを投げたい衝動や怒鳴りたい衝動。そういうの、少し理解ができて、それと同時に、感情を思い切り外に出せる果歩さんを羨ましいと思った。
< 8,609 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop