光のもとでⅠ
 夕飯のあと、ダイニングでお茶やコーヒーを飲みながら歓談しているところだった。
 咄嗟に笑みを浮かべた自分に気づき、思わず頬に手を当てる。場の雰囲気に合わせて笑顔作るのは、まるで自分と周りの人をごまかしているみたい。
「何、じゃないわよ。……明日、学校から帰ってきたらドレス買いに行くからね?」
「え?」
「……本当に何も聞いてなかったの?」
 お母さんに呆れられてしまう。
「ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてて……」
「食後だから仕方ないよ」
 庇ってくれたのは蒼兄で、お母さんの話を引き継いだのはお父さんだった。
「明日、湊先生の結婚式で着るドレスを買いに行くよ、って話」
「あ……」
 話の内容に思い切り現実に引き戻された。
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