光のもとでⅠ
 半年以上「藤宮」に関わってきて、普通とは少し違う家であることはわかったし、独特な教育方針があることもわかった。
 よその家のことに口出しするつもりはない。でも――私に関していうならば、もう二度と選択権はいらないと伝えたい。
 伝えたい、というよりは、宣言かもしれない。気分的には宣戦布告――。
 会ったことがあるわけではない。でも、そんなふうに思うくらいには、ツカサのおじいさんにあまりいい印象はなかった。

 一階に着くと人が溢れていた。みんな下駄箱前の掲示板に群がっている。そこにどこのクラスがどこを掃除する、という分担が書かれているためだ。
 私は思わず後ずさる。夏ほどではないにしても、身体に痛みがあるとき、人ごみに入りたいとは思わない。
 私に気づいた海斗くんが、「大丈夫」と口にする。そして、人が集まる方へと視線を向け、携帯をかけた。
「和総ー、うちどこだった?」
 背をかがめてくれて、一緒に携帯からの反応を待つ。
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