光のもとでⅠ
 掃除用具を片付けるとき、ステージ裏にある全身が映る鏡に自分の姿が映った。
 顔の半分はマスクで隠れていて、どんな表情をしているのかは見えない。マスクの下の顔は――私は自然に笑えているだろうか。
 怖くてマスクを外して確認することはできなかった。不安と疑問を抱えたまま、私は鏡の前から離れた。

 家に帰ると、出かける用意が整っている家族に迎えられる。すぐに制服を着替える旨を伝え自室に入った。
 いつもなら何着かあるルームウェアに着替えるところだけれど、今日は出かけるのでルームウェアというわけにはいかない。
 クローゼットを開けて少し悩み、なんとなく暖かそうに見えたものを手に取った。
 黒いオフタートルに赤い毛糸でモチーフ編みされている膝丈スカート。これの上にAラインの白いコートを着よう。
 ライトグレーのラビットファーのバッグに必要なものを入れると部屋を出る。
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