光のもとでⅠ
「翠葉、お茶が入ってる」
 蒼兄に声をかけられ、
「すぐに出るんじゃないの?」
「まさか。さすがに少し休憩は必要だろ?」
 言われて、着たばかりのコートを脱がされた。
「とりあえず、うがいと手洗いしておいで」
 ふわりと笑う蒼兄の笑顔は私の精神安定剤。近くにいると安心する。楽に呼吸ができる。
 ずっと蒼兄だけだった。でも、今は唯兄もいる。唯兄が来てから、蒼兄との距離が少し開いた気がしたけれど、その分はしっかりと唯兄が補ってくれていた。
 蒼兄ひとりで請け負っていたものを、ふたりでバランスよく分担したような……そんな感じ。
 ふたりの間で話し合いがあったのかは知らない。でも、私にはとても心地よいバランスだった。
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