光のもとでⅠ
「翠葉はまだ会ったことがないんでしょう? 百聞は一見にしかず、よ。会って話してみればいい。人伝であったり、何かフィルターを通して見るよりもそのほうが確実」
真っ暗な視界の中、お母さんの声だけがはっきりと耳に届く。
「会う日が良くない……。先生の結婚式におじいさんのお誕生日。どちらもおめでたい席なのに、私、文句言っちゃいそう」
自分の息が手にかかる。声はくぐもり聞きづらかったと思う。それでもお母さんは、
「文句を言われて気分を害す方じゃないわ」
いつもと口調を変えることなく答える。
手の平で顔の筋肉を解すようにぐにぐに押す。顔から手を離すと、
「翠葉はまだ人に聞いた話でしか会長を知らないでしょう?」
コクリと頷く。
「じゃぁ、お会いしたときに感じたものを第一印象にしなさい」
「でも……もう、ここに……先入観があるの」
胸を指差して答えると、
「大丈夫。先入観をも覆してくれるような方だから」
そう言ったお母さんは自信たっぷりに微笑んだ。
真っ暗な視界の中、お母さんの声だけがはっきりと耳に届く。
「会う日が良くない……。先生の結婚式におじいさんのお誕生日。どちらもおめでたい席なのに、私、文句言っちゃいそう」
自分の息が手にかかる。声はくぐもり聞きづらかったと思う。それでもお母さんは、
「文句を言われて気分を害す方じゃないわ」
いつもと口調を変えることなく答える。
手の平で顔の筋肉を解すようにぐにぐに押す。顔から手を離すと、
「翠葉はまだ人に聞いた話でしか会長を知らないでしょう?」
コクリと頷く。
「じゃぁ、お会いしたときに感じたものを第一印象にしなさい」
「でも……もう、ここに……先入観があるの」
胸を指差して答えると、
「大丈夫。先入観をも覆してくれるような方だから」
そう言ったお母さんは自信たっぷりに微笑んだ。