光のもとでⅠ
 お茶を飲み終えお父さんたちのところへ行くと、唯兄は礼服とスーツの二着を試着していた。蒼兄はシャツとネクタイと靴、小物一式揃えることになったみたい。
 一見したところ、お父さんのわがままを聞いてそうなったのかと思った。
「翠葉聞いてよ。どこまでも翠葉命の蒼樹はな――」
 話そうそするお父さんを蒼兄が羽交い絞めにして止める。けれど、お父さんの言葉を唯兄が継いでしまったのであまり意味はなかった。
「俺がリィのドレスに合うもの選ぼう、って言ったら、すかさず『俺も……』だって」
 蒼兄の腕から半分逃れたお父さんが、
「まったくかわいいお兄ちゃんたちだよねー? ぐぇ……」
 嬉しそうににこにこと笑っては、さらに絞められる。
 絶賛首絞め中の蒼兄と目が合うと、
「だって、唯だけ……はずるいだろっ?」
 めったに聞くことのない言い訳にびっくりした。
 さっきから、うちの家族はことあるごとに「ずるい合戦」をしている気がしてならない。そんなことがおかしく思えて、声を立てて笑った。お腹が痛くなるくらい、腹筋にききそうなくらい笑った。
 お店の姿見に自分の笑った顔が映っていた。それから、家族の笑顔も。
 あぁ……私、笑ってる。笑えてる――。
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