光のもとでⅠ

26

 終業式当日もいい天気だった。放射冷却で寒さが際立つ。ピュッ、と坂の下から吹き上げた風に目を瞑る。
 この、張り詰めたような空気が好き。冷たくて、一寸の隙もなくて、肺いっぱいに吸い込むと身体の内からリセットされるような……。「清浄」を感じる。そんな空気が小さい頃から好きだった。
 好きだけど、この空気は私の身体に優しくない。手先足先から徐々に体温が奪われる。家を出る寸前まで温めていた苦労もほんの数分の命。あっという間に体温を奪われ、指先から手首足首へと鈍い痛みが少しずつ広がり、やがて痛みは鋭いものへと変わっていく。芯まで冷たくなると、傷む箇所をぎゅっと押さえずにはいられない。
 あちこち痛くなるけれど、それでもこの寒さを嫌いになることはない。
 私の身体に冷えは厳禁。わかっていても、時々その冷たさに身を晒したくなる。それはほぼ発作的に。
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