光のもとでⅠ
「なのに、どうして……? 藤宮先輩も翠葉ちゃんのこと好きなのに――」
 今にも泣きそうな顔で言葉を続ける。
「まさかとは思うけど、あそこまで意思表示されてて気づいてないとかはないよね?」
 私はどんな顔でどんな言葉を返したらいいのかわからない。
「……どうして? なんで藤宮先輩避けるの?」
「っ……避けてな――」
「避けてるよっ」
 香乃子ちゃんが勢いよく立ち上がる。驚いたスノウは私たちのもとから一目散に逃げた。
「避けて、ないよ?」
 話しかけられれば話すし、用があれば話しかける。すれ違うときには挨拶だってする。避けてはいない――。
 恐る恐る香乃子ちゃんを見ると、
「避けてるっ。会話してても避けてる。一緒にいても避けてるっ」
 叫ぶような声だった。こんな香乃子ちゃんは初めて見た。
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