光のもとでⅠ
 プラスチック製のカップから伝う温度はあたたかいと感じる程度で熱くはない。
 熱湯で淹れたのだとしたら、淹れてからずいぶんと時間が経っていることになる。
「あ、ぬるいですか?」
「いえっ、あのっ――」
「すみません」と言いそうになって呑みこむ。
 私がウサギ小屋でぼーとしていた時間、秋斗さんと同じように用務員さんをも待たせてしまったのかもしれない。
 こういう場面でなら謝罪の言葉を口にしても良かったのだろうか。
 考えながら、
「……とても、ほっとするあたたかさです」
 かろうじて口にできた言葉は少し震えていた。寒さからではなく緊張から。
 胃のあたりがきゅっと締めらつけれるような感じがした。
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