光のもとでⅠ
「冷えただけだから……。初等部に行って動物を見ていたら冷えちゃったの」
「……それだけ?」
「それだけ。……あ、秋斗さんにも会ったよ」
 情報源は唯兄だと言っていた。なら、ここで何も言わないほうが不自然かもしれない。
 そう思って私から話したけれど、意外だったのか、唯兄は口を噤んだ。
「お母さん。お風呂に入ってもいい?」
「大丈夫なの?」
「うん……お湯に浸かってあたたまりたい。このままだとなんだか戻しちゃいそうで……」
「吐き気がするの?」
「今は痛いだけだけど……」
「そうね……冷えると翠葉は戻すものね。すぐに用意するわ」
 お母さんは踵を返して洗面所に消える。
「熱はない?」
 唯兄におでこをこっつんこされる。
「……っていうか、リィ……。おでこまで冷たいよっ!?」
 言われた直後、唯兄の手が伸びてきて、頬や額を手であたためてくれた。
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