光のもとでⅠ
「あったかい……」
「あ……手はあたたかいけど心もあたたかいのでご心配なく」
 思わず笑みが漏れる。
「誰も手があたたかい人は心が冷たいなんて思ってないよ」
「逆はよく聞くじゃん」
 その手にずっと触れていたかったけど、お母さんから声がかかった。
「あと二分もすれば溜まるわ」
「ありがとう」
 自室にかばんを置くと、マフラーを取りコートを脱ぐ。制服は着替えず、着替えを持って洗面所へ向かった。始終べったりと私にくっついていた唯兄が、
「お昼ご飯食べれそう?」
「うん、少しくらいなら。お昼、何?」
「長ネギときのこたっぷりの鶏ガラベースのおうどん」
「美味しそうだね」
 そんな会話をして洗面所のドアを閉めた。
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