光のもとでⅠ
 ジリジリと温度の上がるお湯の中で肌が赤くなっていく。
「……このくらいが限界かな?」
 もう少し、もう少し……と思いながらお湯を足していたけれど、身体が耐えうる温度的にも、バスタブいっぱいになってしまった水量的にも、このあたりが限界。
 半身浴ではないから長くは浸かっていられない。心臓に負担がかかる前には上がらなくては……。
 五分ほど浸かったところで一端バスタブを出て髪の毛や身体を洗う。そして、最後にもう一度バスタブに浸かった。
 今度は三分と経たないうちに出る。
 シャワーで手先足先に冷水を浴びせ、抹消血管を引き締めてからバスルームを出た。
 身体はあたたまったというのに、腹部の痛みは依然消えぬまま。
「どうしよう……ご飯、食べられるかな?」
 不安に思いつつ、洗面所を出る。
 自室で化粧水をつけていると、唯兄が来て髪の毛が濡れたままダイニングに連行された。
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