光のもとでⅠ
「あ、れ……?」
 後ろでゴォォォォとドライヤーをかけている唯兄が、
「どうかした?」
 私の顔を覗き込む。
「ものが落ちても胃が痛くなくて……」
「は……? 何それ?」
「……最近、何を食べても胃にものが落ちたときの衝撃が苦痛だったのだけど、それがなくてびっくりした」
「ちょっとっ、そんなにひどかったのっ!?」
 ものすごい勢いで唯兄に詰め寄られた。
「で、でもっ、今、大丈夫だったからっ」
 そう言って二本目を飲み下しても、やっぱりひどく痛むことはない。
「大丈夫かも……?」
 まだ食欲はないけれど、これなら大丈夫かもしれない……。そう思えた。
 お母さんは私の隣で一緒に食べていて、私と唯兄のやりとりをじっと見ていた。
 私と同じように一本のおうどんをちゅるちゅる、とすすり、口の中に物がなくなると口を開いた。
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