光のもとでⅠ
 ポンポン――。
 先生は私の背を優しく叩いてくれる。
「悪ぃ……。ま、落ち着けや。ほれ、身体の力抜いて……」
 言われるまで気づかなかった。
 私は手に握りこぶしを作っていて、その力を緩めることすら困難な状態だった。足の膝にもお腹のあたりにも力が入っていて、何よりも顔――顔の筋肉が強張り、顎に力が入り歯がギリギリと音を立てていた。
 先生は私が冷静になったのを察すると身体を離し、まずは手の拳を指一本ずつ剥がしてくれた。次に肩の辺りから解すように全身の力を抜いてくれる。
「おまえ、ストレス発散できてっか?」
「……ストレス、発散?」
「ストレスの脈がずっとマックスってーのはよくねぇよ。ちょっとしたことですぐ身体に余計な力が入るしな」
 ストレスの発散……って――どうやってするんだっけ……。
 虚を衝かれ、必死で頭を働かせようと思っても何も思い浮かばなかった。
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