光のもとでⅠ
「あぁ、これは降ってくるだろうな。……何かあったのか?」
「え……?」
 蒼兄は空を指差しながら、
「翠葉の表情もこの空みたい」
 何も答えられないでいると、後ろの車にクラクションを鳴らされ心臓が止まるかと思った。
「わ、すみませんっ」
 蒼兄は慌てて車を発進させた。
 事前清算を済ませた駐車券を清算機に通すと、赤と白のバーが上がる。
 カチカチと方向指示器の音が鳴り、車が曲がるときの遠心力でほんの少し身体が右に振られた。
 一般道に出て走行が安定すると、
「で? 何かあった?」
 改めて訊かれる。
「……涼先生に捕まっただけ」
「え?」
「……九階に行ったらいらしたの」
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