光のもとでⅠ
「時間を……無駄に過ごしたくないの。冬の寒さを感じたい。霜の降りた土を見たり、草についた露を見たり、外の空気を吸いたい」
「昨日も訊いたけど……何かあったか?」
「……ごめん、上手に話せない――」
 蒼兄を正視できなくて視線を床へ落とす。
 すると、肩に重力を感じた。それは蒼兄の手。
 少し押されて蒼兄が部屋に入ると、片手でドアを閉めた。
「上手になんて話さなくていいよ。聞く時間がないわけじゃないし」
 私はゆっくりと息を吐き出す。
「あの、ね……泣きたくないの。自分が弱いせいで……泣きたく、ないの」
「今日はランニング休むよ」
「それもやなのっ」
「翠葉?」
「自分のせいで人の予定や何かを狂わせるのも嫌……。あと、ここに留まったままなのも嫌」
 蒼兄は諦めたように息を吐き出した。
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