光のもとでⅠ
「じゃ、あと二十分したら出てきて。ちゃんとあったかい格好してジョギングコースから大体育館に行く道の分岐地点。そこで待ち合わせ」
「でも、そしたらいつもより走る時間短くなっちゃう……」
「大丈夫。いつもよりハイペースで走るから」
「え?」
「本気で走れば十キロ三十分台で走れる。あと二十分後に翠葉が家を出ればちょうどいい。そしたら翠葉にクールダウン付き合ってもらえる」
「……あり、がと」
「その代わり、翠葉はちゃんと防寒対策してこいよ?」
「うん。お腹と背中にカイロ張って、タイツにレッグウォーマーと肘までの手袋とダウンコート着る」
 そこまで言うと、
「残念。ふたつ漏れてる」
 ドアの外から声がした。
 すぐにドアが開き、
「マフラーとイヤーマフがついたら完璧」
 唯兄が面白くなさそうな顔をして立っていた。
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