光のもとでⅠ
「言葉って……難しい」
 もしかしたらそれ以前の問題で、人と話すこと、人と接することを難しいと感じてしまっている気がしなくもない。
「家族なのに……」

 私は防寒対策一式をクローゼットから取り出しベッドに並べた。
 カイロを貼り終えると、コーヒーとスティックシュガーを持った唯兄が入ってきた。
 さっきはパジャマ代わりのスウェット姿だったけど、今はちゃんと洋服に着替えている。
「こんな寒い中、よくランニングとか行く気になるよね? リィもだよ。なんでこんな時間に散歩かなぁ……あー、さむっ」
 唯兄はヒーター近くに腰を下ろし、スティックシュガーの端の部分を一気に千切って四本同時にザッとカップに投入する。
 唯兄が甘党なのはわかっているのでそのことをとやかく言うつもりはないけれど、服装が気になって仕方ない。
 今現在の格好は家の中ならともかく、外に出るには極めて薄着だ。
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