光のもとでⅠ
「メリットデメリットってなんにでもあるよね。通学が楽になっても毎日の日課ができないとか」
「でも……身体を起こしてダイニングまで行けば空は見ることができたよ」
「けど、ここから見える風景と九階の窓から見える風景は全然別物でしょ?」
 少しびっくりした。
 私は「空を見る」としか話していないのに、風景が違うと指摘されるとは思ってはいなくて。
 何よりも、空を見る日課なんて通学の負担が軽くなったことに比べたらとても些細なことだと思っていた。
「うっし、二十分経ったから行こうっ!」
 唯兄が元気よく立ち上がる。
 完全武装で自室を出ると、温度差のせいかさっきよりもリビングの空気が冷たく思えた。
 けれど、それ以上に冷たかったのは外の空気。
 外に出た唯兄はブルブルっと震える。
 普段から、唯兄は動物にたとえるなら猫だなとは思っていたけれど、こういった仕草を見ると余計にそう思う。
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