光のもとでⅠ
 そう思うと怖くなる。唯兄も離れていってしまうのではないか、と……。
 泣かない、泣かない泣かない泣かない――でも、怖い。
「翠葉……話そうとしてもっと苦しくなるなら言わなくていい。話したら楽になるとは限らないから。話せるようになったらでもかまわないよ。苦しくてどうにもならないとき、絶対そこに俺たちはいるから」
 目にじわりじわりと涙が溢れてくる。
「蒼兄……私、そういう優しさに甘えて、甘えすぎて……友達なくしちゃったかもしれない」
 ぎゅっと目を瞑る。
 頬に涙の筋ができるのが嫌で、涙の痕がつかないように下を向いて目を瞑った。
 今ある涙をすべて足元のコンクリートに落としてしまうために。
「……翠葉。桃華と佐野くんから伝言がある」
「っ……!?」
 桃華さんと佐野くん、から……?
「何を」と訊きたくて訊けない。喉に何かが詰まってしまったみたい。
「翠葉があまりにも落ち込んでるようだったら伝えてくれって言われてた」
 蒼兄に言付けられたものは――。
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