光のもとでⅠ
 ――「私たちは友達だから、たまにきついことを言うかもしれない。でも、それで友達をやめるとか離れるとか、そういうことは考えてない。佐野も同じ。私も佐野も、どうでもいい人間が相手なら何も言わずに離れてる」

 嬉しくて――けれど、あまりにも自分が情けなさすぎて素直に喜べない。
 涙だけがすんなり出てしまいそうで、必死にそれを押し留めていた。
 寒さから身体中の筋肉が硬直し始めていたけれど、それとは別。
 涙を堪えるというのはひどく筋肉を使うらしく、顔中の筋肉に力が入り、しだいに唇が震え始める。
 首筋にも突っ張るような感覚があった。
「リィ。顔上げてごらん」
 ガチガチに固まっている上半身で、否定の意味を表すように身体を揺らす。
「いいから、あーげーるーっ」
 唯兄はつないでいた手を離し、頭の側面を両手で押さえると、下を向いていた顔を力ずくで上げた。
 そして目にしたものは――。
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