光のもとでⅠ
「見えた? 朝陽だよ」
 目の前に昇ってきたばかりの真っ赤な太陽が滲んで見えた。
 太陽と目の間には涙というレンズがあって、光の強さもぼやけ具合も殺人的。
 蒼兄が、「きれいだな」と頭に手を置き、唯兄は手をつなぎなおす。
「リィ、ごめん……。なんか最近のリィは危なっかしすぎて見てらんなかったんだよ。でも、それでこんなふうに訊くんじゃもっと困らせちゃうよね」
「そんなこと――」
 ない、と続けたくても続けられない。
「家族の前でくらい、もっと肩の力抜いていいんじゃない?」
 蒼兄の手が両肩に移り、マフラーの上から強すぎない力で肩や首を揉みほぐされる。
 ベンチに座り、徐々に空を上がっていく太陽を見ていた。
 気づけば外灯は消えていて、ところどころから鳥のさえずりも聞こえてくる。
 私たちの間に会話はなかったけれど、さっきのような居心地の悪さは感じなかった。
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