光のもとでⅠ
 唯兄の表情をうかがい見ると、「お見通し」と言わんばかりに口端を上げて笑っていた。
「願わくば、兄妹喧嘩とかしたいかも? リィともあんちゃんともね。くっだらないケンカして仲直りすんの。それが今の俺の夢」
 ずいぶんと不思議な夢を聞かされた気分だった。
「待ってるからね? リィが目ぇ吊り上げて俺に文句言ってくる日を」
「あ……それ、俺も便乗したい」
 蒼兄が空いている左手を上げ真顔で言う。
 右左、と兄ふたりの顔を交互に見ると、唯兄も蒼兄もにこりと笑った。
「もっと口にしなよ、思ってること。少なくとも、俺とあんちゃんは言われて困るなんてことないと思うよ?」
「そうそう。相手を傷つけようがケンカしようが、どんなことがあっても家族であることには変わらないし」
「切ろうと思ってもそうそう切れないもの。それが家族でしょ?」
 またしても両の手に力をこめられる。
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