光のもとでⅠ
「その人、一応多忙な身なんでな」
 相馬先生から視線を戻し涼先生を見上げると、
「そうですね。決して暇つぶしにここへ来てるわけではありませんね。診察の合間を縫って来ていますので、おとなしく診察させていただけると嬉しいのですが」
「あの……私、消化器内科科の予約は入ってませんし、お忙しい先生自ら出向いていただかなくても……」
 少し顔を逸らして答えると、後ろにいたお母さんに怒られた。
「翠葉っ、時間を割いて来てくださっているのにその言い方はないでしょうっ!? 涼先生、すみません……」
「いえ、いいんですよ。お嬢さんの言うことも一理あるので。私が放っておけなくて診に来ているにすぎませんから」
 涼先生はお母さんにも笑みを向けた。
「では診察をするのでこちらへ。お母さんは廊下でお待ちください」
「はい、よろしくお願いします」
 私は物のように差し出され、夏に入院した病室へ連行された。
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